魔界に来て一体どのぐらいの月日がたったのだろうか…
「………様…」
「…魔…様…」
「大魔王様?」
ふと少女が我に帰ると、先ほどの部下がすぐ傍まで来ていた。
「バール、まだいたのか?」
「何を言っておられるのです。私の話を聞いていなかったのですな」
「ああ」
そういうと少女は不服そうなバールを尻目に玉座へと向かった。
「で?なんのようだ?」
「は、先ほども言いましたが、我らが領内に地上より侵入した者がおります」
「地上?久しいな…しかしその程度の事をわざわざ報告するまでも無かろう」
「それが…すでに魔王クラスが3名、やられております。おそらくは超魔王級かと…」
「ほう?地上にもそんな奴がいたか…」
「何でも闇の王子を名乗っているとか…」
「!?」
闇の王子…
間違いない…彼だ…
闇の王子が魔界に進行を始めた…という事は…
「地上は滅んだか…」
自分でも驚くほど淡々とその言葉が綴られる
「御意に…少しはご傷心ですかな?」
「いや、興味は無い」
「左様で御座いますか…」
本当に興味が無かった。
すでに魔界の王として、その身を「闇」に染めた少女にとって、人間界の事などはどうでもよかった。
ただ、闇の王子という言葉に、平常ではいられない自分が非常に不快だった。
「私が直々に行こう、場所は」
そういうと少女は三たびバルコニーへ向かい、闇の王子の元へと飛び立った。
「クロワ…」
その言葉は誰にも届くことなく、魔界の闇に消えた…