第17話 魔界のプリンス


目覚め

【エトナ】
殿下ー。殿下、起きてくださーい。このガキ、ちっとも起きやしないわねー。もう一回殺してやろうかしら。

【ラハール】
……だれだ、このラハール様の眠りをさまたげる命知らずは?

【エトナ】
殿下!よかったー。今度は生きてたんですね。

【ラハール】
勝手に殺すな。少し昼寝をしていただけだ。それより、お前……後ろに転がっている武器は、なんだ?

【エトナ】
いや、これで殿下を起こそうかと……

【ラハール】
お前なぁ……オレさまを起こしたいのか殺したいのか、どっちなんだ?

【エトナ】
起こし……あ……いえ、殺したかったんです。

【ラハール】
逆だバカモノ!……まぁよい。……で、なにごとだ?わざわざ、オレさまを起こしたからにはなにか用があるのだろう?

【エトナ】
あ、そうでした。大変です。殿下のお父上、クリチェフスコイ王が死んじゃいました。

【ラハール】
オヤジが……!?いつだ!?

【エトナ】
二年と四十一時間前。

【ラハール】
なんだその半端な数字は!……って、ちょっと待て。……ということは、なにか?オレさまはオヤジが死ぬ前から───つまり二年以上も眠り続けていたわけか?

【エトナ】
はい。

【ラハール】
「はい」って、お前……なぜ、早く起こさん!?

【エトナ】
だから、こうやって一生懸命、起こしてたんじゃないですかー。殿下が寝坊している間に、 魔界は、えらいことになっちゃってますよ。魔王の座を他の悪魔に奪われてもあたしは知りませんからねー。

【ラハール】
なんだと……?魔界の次期後継者たるオレさまをさしおいて魔王の座を奪うだと……?クックックッ……。よい度胸だ!その者どもを片っ端から皆殺しにしてくれるわ!ハァ〜ッハッハッハッハッ!!!!

【エトナ】
はい、殿下。このエトナも、お供させていただきまーす。

【エトナLv2051】が仲間になった。

【ラハールLv1】
うむ、しっかり働くのだ───バカな!?レベル2000だと!?なんなのだお前は!

【エトナ】
あ、これは気にしないで下さい。大丈夫ですよ、殿下の魔王の座を奪おうなんて思ってませんから。

【ラハール】
信用できるか!

【エトナ】
ま、アタシにも事情があるって事です。しばらくは殿下の魔王ごっこに付き合ってあげますから心配しないで下さい。

【ラハール】
ごっこではない!俺様が真の魔界の後継者なのだぞ!?

【エトナ】
はいはい。行きますよ殿下。

【ラハール】
くそぅ、子ども扱いしおって…。


勧誘

【エトナ】
さてと、ほんじゃまずはアイテム界の曲を「悪夢のヒロイン」に変更っと。次は暗黒議会で練武、別魔界、謎の封印を力ずくで開封。人間魔王と年増魔女を倒して…お?仲間になるんだ?へぇ〜、殿下も一応、魔王様の息子って事ですかね?

【ラハール】
ちょっと待たんか!なんだ!なんなのだこれは!いきなりレベル500以上もあるような議員どもを叩き伏せたと思ったら、今度は異界の魔王や最凶最悪の魔女を瞬殺だと!?キサマいったい何者だ!

【エトナ】
だから〜、殿下の家来ですってば。一応。

【ラハール】
「一応」を付けるな!だいたいお前、昼寝をする前は俺様よりも弱かったではないか!

【エトナ】
そんな、昔の話じゃないですか〜。

【ラハール】
昔ってお前…たったの2年前だろう?

【エトナ】
正確には2年前じゃなくて、41時間前ですけどね。

【ラハール】
バカを言うな!そんな短時間でレベル2000になってたまるか!

【エトナ】
それがなれるんですよね〜、ホラ、このチラシ見て下さい。

【練武育成法で君もLv1000オーバー!】

君は今魔界で大人気の練武育成法を知っているかな?
練武育成法は今までになかった画期的なレベルアップ法で、
なんと1分でレベルが500まで上がっちゃう、夢のような育成法なんだ。
努力次第ではLv9999も夢じゃないぞ!?

この育成法を試した悪魔たちからも
「これでもうワガママな殿下にこきつかわれなくて済むッス」
「育成法を試したら憧れの正義のヒーローさんより強くなっちゃいました」
「これで俺様もダークヒーローに返り咲きだぜ!」
など、感謝のお手紙をたくさん貰ってるんだよ。

今なら育成に使うAtk10000の剣を、なんと破格の10万HL/1回で貸し出し中!
入会費はたったの500万HL!

さあ今すぐ練武育成事務局に〜?
「電話しってっね♪」
「お電話待ってるわん♪」

【ラハール】
……なんだこれは。思いっきりうさんくさいではないか…。

【エトナ】
アタシが作ったんです♪殿下も入会しませんか?

【ラハール】
するか!


乱入

【エトナ】
さて、んじゃとりあえず練武にでも…

【アクターレ】
待てー!

【エトナ】
ん?なにアンタ、アタシになんか用?

【アクターレ】
なんか用?じゃーねぇ!俺達が主人公になる話はどうなったんだ!

【エトナ】
んな設定ねーっつーの。

【フロン】
そ、そんな!確かに私、神様から聞いて…

【エトナ】
神様って、アンタ達がボコったアイツじゃねーの?

【フロン】
あ…

【アクターレ】
え…?じゃあ主人公になる話はウソだったのか!?

【エトナ】
まあ、そういう事なんじゃね?しらねーけど。

【フロン】
そ、そんな〜、あんなに頑張ったのに〜。

【ラハール】
おいエトナ、なんなのだコイツらは?

【エトナ】
ただのバカですよ。放っておきましょう。

【ラハール】
いいのか?それで…

【アクターレ】
うそだーー!!!!!


次回予告

【エトナ】
暴飲暴食の限りを尽くしたラハール殿下に、とうとう肥満の時が来た!

【ラハール】
おい。

【エトナ】
一向に痩せない殿下の代わりに、食卓に着く健気なエトナ。

【ラハール】
人を勝手に肥やすな。

【エトナ】
ごちそうさま殿下。殿下の食事もデザートも全てエトナがいただきます。

【ラハール】
暴飲暴食はお前ではないか!

【エトナ】
次回!マジカル美少女エトナ第18話!
「太った殿下の素敵なダイエット」

あなたのハートにマジカルチェックイン♪

【ラハール】
ダイエットが必要なのはむしろキサマの方では───
(バキューンバキューン)
ぐあああぁぁぁぁぁ!