幻想世界Vol.3 魔法について2

魔法の種類

CRPGでは表現の難しさからか、多くの魔法が登場しません。例えば情報を得るために、カエルやカラスに化けて敵の屋敷に忍び込んだり、音を飛ばす魔法で反対側の茂みに音を発生させ衛兵の注意をそらしたり、太古の魔術書や異国の文字を解読したり。

魔法使いの魔法は、主にこういったサポート系のものが多いのです。しかし決して攻撃魔法が使えないわけではありません。しかし、魔法使いは一般的に受け入れられている存在ではなく、畏怖と畏敬の対象です。そのため魔法使いの多くは目立つ事を嫌います。また、より小さい魔力で大きな成果を挙げることを誇りとしており、効果に対して魔力消費が大きく、無骨な破壊魔法を好んで使うものはあまりいないのです。


魔法の使用例

ある魔法使いが領主の差し向けた刺客に襲われ、屋敷の中を逃げ回っています。相手は歴戦の戦士が3人、コチラは老齢の魔法使いが1人。しかも狭い屋敷の中には貴重な資料が山と詰まれており、まさか攻撃魔法をぶっ放すわけにもいきません。

まず魔法使いは、一つの狭い部屋に逃げ込みます。部屋の入り口は通路が狭く一人ずつしか通れないようになっています。ここで最初の一人が扉をくぐった瞬間、ドアを遠隔操作で閉め、魔法の鍵をかけてしまいます。

突然後ろの扉が閉まったことに驚いた戦士は必死でドアを開け、仲間を招きいれようとしますが、魔法によって錠をかけられた扉は、より強力な開錠の魔法でしか開く事はありません。結果として残りの二人は別の道を探す羽目になり、残された戦士は一人で魔法使いを追うことになってしまいました。

さて、戦士が扉と格闘しているスキに、魔法使いは次の部屋で準備を整えていました。床に描かれた魔法陣の中心に不適にたたずむ魔法使い。それを見た戦士は魔法陣を何らかのトラップだと考え、警戒心を強めて魔法陣の外側から攻撃の機会をうかがいます。

しかし魔法陣にたたずむ魔法使いは幻影であり、本物の魔法使いはすでに屋敷の外へ出ていました。

「はてさて、あやつがわしの幻影と遊んでいる間に、残りの二人をからかってこようかのう」

魔法使いはのんびりと腰を下ろすと、懐から取り出した水晶に残った二人の姿を映しながら、どうやって彼らを歓迎してやろうかと思いをはせるのでした。


魔法使いの戦い

前述のように、魔法使いの戦いの基本は「心理戦」です。相手の心のスキをついて、煙に巻くような戦い方が良いのです。

前の例では、遊ぶつもりが無ければ魔法陣の部屋に戦士をおびき寄せた時点で、石化の魔法で石に変えたり、変身の魔法でカエルにしたりすれば終わりです。また残った二人も幻の魔法でお互いを自分の姿に見せてしまえば、勝手に同士討ちしてくれる事でしょう。

このように魔法の効果を熟知し有効に使うことで、力による脅威を簡単に回避してしまうのが、魔法使いなのです。力に対し、正面から力(攻撃魔法)で立ち向かうのは、体術で劣る魔法使いには本来向かない戦い方です。


CRPGの魔法

CRPGでは、多くの場合攻撃魔法以外役に立ちません。魔法使いを単なる破壊者としてしか見ていない証拠です。また魔法の力を過小評価すると共に、破壊専用だと誤解している例でもあります。

例えば、魔法のランクが上がってくると、明らかに世界を滅ぼす魔法を使えるようになります。隕石を降らせる魔法や核爆発を起こす魔法などは論外でしょう。それ以外にも、巨大な火球を降らせる魔法を森の中で連発したり、海での戦いで嵐を呼び起こしたり、洞窟の中で地震を起こしたりします。明らかに「自分が死にます」。

CRPGでは魔法は「派手さ」だけが優先され、そのデメリットなどは全く考えられていません。仮に魔王を倒して世界を救っても、自ら世界を崩壊させ、自然を焼き尽くし、町を破壊していれば、勇者として迎えられるどころか、魔王として退治されるのがオチだと思います。

せめてTPOを考えて、場所によって使用魔法に制限をかけないと、魔法使いと破壊神は同じ意味になってしまうと思います。


>この話の続きを読む