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ジェリービーンズ 小説


愛のカボチャ作戦

チェロとの結婚式から数ヶ月後。
あたしはお母さまにお料理を教えてもらいながら
愛するチェロのためにお勉強をしています。

お母さまの得意な特製シチューから始まって
難易度が高い(らしい)焼き川魚のオレンジソースまで・・・。
シチューはもちろん、お父さまのお気に入りである
焼き川魚のオレンジソースは、教え方にも力が入っちゃうお母さま。

ハリセン片手に目を光らせてて、
失敗するたびにハリセン攻撃が飛んでくるから怖い・・・(汗)

自分ではうまくできた〜♪って思ってもなかなか合格をもらえないくらい。
じ、自分で言うのもなんだけど、これでもけっこうお料理上手になったのよ!

相変わらずお鍋焦がしたりはするんだけどね・・・///

今日は、愛するチェロの”カボチャ嫌い”を克服させるべく、
お母さまにカボチャ料理を教えてもらってるの。

前にマザーグリーンにあるおいしいと評判のお店でやっていた
春のカボチャフェアーへ行ったとき。

味自慢の評判のお店のならチェロも食べてくれると思ったんだけど・・・。
出てきたお料理を見ただけで、気分が悪くなっちゃったみたい。

あたしはカボチャのサラダとか好きなんだけど。

マール城の図書館で読んだ本に載ってたんだけど、カボチャには栄養がた〜っぷり
含まれてるんだって!

妻として愛する旦那さまには栄養たっぷりのおいしいお料理を食べさせてあげたいんだけど
カボチャだけはどうしても食べてくれないの。

それで、お母さまに相談したら
カボチャ嫌いが克服できるものを教えてもらうことになって・・・。

「クルル。お料理に欠かせないものはなにかしら・・・?」

おっきなカボチャを目の前に、お母さまが人差し指を立てながらあたしに問いかける。

「もっちろん、愛情よ!!」

あたしは自信たっぷりで答える。

「そう、愛情。愛情を込めればお料理はもっともっと美味しくなるのよ。
だから、カボチャだってクルルの愛情を込めれば美味しいお料理になるわ」

「・・・」

「クルル?聞いてるの〜?」

「ねぇ、お母さま。愛情だけでチェロのカボチャ嫌いを克服させられるかな?」

重度の(?)カボチャ嫌いなチェロだから、自信がない。

「大丈夫よ。このわたしが伝授するカボチャのレシピを持ってすれば
カボチャ嫌いなんてイチコロよ♪」

「い、イチコロって・・・/汗」

*

「イチコロはわかったけど、何を作るの?」

「ふふふ♪コルネット秘伝!カボチャのステーキよ!」

「カボチャのステーキかぁ。」

「なにがっかりしてるのよ〜?」

お母さまは不満そうだけど・・・。

「春のカボチャフェアーでね、店主のオススメっていうカボチャステーキも
ダメだったから・・・」

「だぁーいじょーぶ!そこらのお店のよりも味には自信あるからね♪」

「う〜ん・・・(本当に大丈夫かな〜)」

*

お母さま秘伝のカボチャのステーキを作り始めたのはいいんだけど。
肝心のカボチャが大きいうえにすんごく硬くって、最初から悪戦苦闘。

「うぅ・・・硬くて切れないよぉ〜!!!」

「ダメよ、クルル!そんなんじゃチェロくんのカボチャ嫌いは克服できないわよ!!」

「そ、そんなこと言ったって〜!」

ふと、あたしはあることに気がついた。

「お母さま、ちょっと部屋に行ってくる!」

「ちょっ・・・クルル?!」

厨房を出ると、自分の部屋へと走っていく。
勢いよくドアを開けると、飾り棚に乗っているフレールを抱き上げ
そのまま厨房へ。

「はぁ・・・はぁ。お母さま、お待たせ・・・」

「フレール・・・?クルル、あなたまさか・・・」

片手に抱いたフレールを見てお母さまはすぐにわかったみたい。

「お願い、フレール!このカボチャを<スライス>して〜!!
”メガウインド”!!」

その瞬間、厨房の中にすごい風が舞い起こる。
調理器具から調味料の入ったビンまで空中に舞い上がる。

「クルル!!なにやってるのよ〜!!」

お母さまは頭を抱えて床にしゃがみ込んでしまった。

・・・メガウインドはすごいねぇ〜。(汗)

フレールのメガウインドがおさまった厨房は悲惨な姿となった。

まだ壁に掛けられたフライ返しとかが揺れている。

「ク〜ル〜ル〜!!(怒)」

「や、やだなぁ、お母さまったらそんなに怒るとシワが増えるわよ♪」

ばしぃぃっ!!!

あたしは思いっきりお母さまのハリセン”王妃の心意気スペッシャル号”の
攻撃を喰らってしまった。

「はうぅぅ・・・(涙)」

「まったく、この子はなんて無茶なことをするのかしら!
魔法で野菜を切るなんてありえないわ!!」

「だって、こうでもしなきゃこのかった〜いカボチャは切れないわ」

床に散らばってしまったカボチャを拾いながらあたしはつぶやく。

「うん、ちゃんとスライスされてる♪ありがと、フレールv」

フレールは素直に喜んでいいのかわからないらしく、戸惑ってるみたい。

あ、ちゃんと床に散らばったカボチャは洗ったから安心してネ!

*

なんとか調理を再開し、ステーキに欠かせないソース作りへ。

「エトワールに頼んで、取り寄せてもらった”醤油”は
貴重なんだから無駄遣いしちゃダメよ!」

「はぁ〜い。・・・そう言われると緊張して手が震える・・・」

計量カップと醤油を持った手が震えてなかなかうまく注げない。

料理の基本はカンペキな計量から。
お母さまに何度も言われているだけに、
こぼしたらまたハリセン攻撃が・・・/汗

ドキドキしながらもなんとか数種類の全ての材料を計り終えた。

「・・・そうしたら次はこのBのソースをAのソースに混ぜるの。」

「・・・あっ、こぼしちゃった・・・/汗」

「・・・・。」

お母さまの反応が怖くて下をうつむいたままあたしは固まってしまった。
ハリセン攻撃が来るぅぅ〜!!!

「・・・?あれ??」

来ると思っていた物が来ないから恐る恐るお母さまを見上げた。

「はぁ〜。やっぱりこぼしたわね・・・」

額に手を当てて深〜いため息をついてるだけで、ハリセン攻撃は来ないみたい。

「ゴメンナサイ///」

「まぁ、こぼしたのはほんの少しだからいいけど・・・。
次、いくわよ!」

お母さま、あたしのドジっぷりに呆れちゃった・・・?

*

ステーキソースにスライスしたカボチャを漬け込んで味を染み込ませる。
お母さま曰くこうすることで、味が良くなるしカボチャ特有の匂いを消せるらしい。

そういえば、チェロはカボチャの匂いが苦手って言ってたっけ。

「まずはフライパンにバターを溶かして。次にソースに漬け込んだカボチャを
フライパンに並べるの。」

ジュ〜ジュ〜と音を立てながらバターのいい匂いが辺りを包み込む。

「焦がさないように両面を焼くのよ。じっくりとね」

「もう、裏返していいの?」

「まだよ。何度も返して両面を焼くの。」

う・・・腕が疲れてきたよぉ〜(涙)

でもっ!完成まであと少し!!がんばるわよ〜!!

「クルル、今よ!」

「へっ?」

「へっ?じゃないわよ!早く火から下ろしなさい!焦げちゃうわよ!」

「まっ・・・待ってぇ〜!!」

「間に合ったぁ・・・。」

「危なかったわねぇ。焦がしたら全てが台無しだもの。」

だ・・・台無し・・・?
本当に危なかったのね・・・/汗

「お皿に盛り付けて、ソースをかけて出来上がりよ。」

「出来たぁ!!カボチャのステーキ完成!!」

「まだよ。肝心な味を見るまでは完成じゃないわ!」

さすが、味にうるさいお母さまだわ。

「見た目は合格ね。
味はどうかしら?」

「・・・・・・」

これで不合格だったらどうしょう・・・。
作り直す気力なんて残ってないよぉ〜

「ど、どう?美味しくない・・・かな・・・?」

「クルル、よく頑張ったわね。・・・合格よ♪」

「ほんと?本当に合格なの?」

「ええ、さすがわたしの娘ね!カンペキにわたしのレシピと同じ味だわ。
甘くて、まろやかで・・・。”醤油”はわたしのレシピには欠かせないのよ。
おいしいわ〜♪」

「よかったぁ〜!!これでチェロのカボチャ嫌いが直ることを祈って・・・」

*

お仕事を終えて帰ってきたチェロ。
すごくご機嫌なあたしを見て不思議そうにしてる。

「待っててね。すぐにご飯の準備するから!」

「ご機嫌だね、クルル。何かいい事あったのかい?」

「うん!お母さまに新しいお料理を教えてもらったの♪」

「クルルは料理が上手になったから、楽しみだよ^^」

「もう、チェロったらぁ〜。照れちゃう///」

「はい、クルル特製カボチャのステーキよ♪
またの名を王妃の秘伝レシピ、カボチャのステーキ!!」

「・・・カボチャ・・・/汗」

目の前に嫌いなカボチャ料理を出されたチェロは青ざめたまま固まっている。

「チェロのためにお母さまから教えてもらいながら作ったのよ」

「・・・」

「いつも以上にあたしの愛情がこもってるわよ〜」

「クルル・・・。僕は・・・」

言いかけたチェロの言葉をさえぎる様に、あたしは言葉を続ける。

「見た目も味もお母さまの保障つきだから、安心して食べてね♪」

「・・・わかったよ、いただきます」

諦めたようにため息をかるくついて、ほかほかと湯気をたてている
カボチャステーキを一口、食べた。

大丈夫、お母さまも褒めてくれたし。
チェロにも喜んでもらえるはず・・・。

「・・・」

なんの反応もないチェロ。

やっぱりダメなのかな・・・

「これ、本当にカボチャなのかい?」

「えっ?」

い、今なんて・・・?

「おいしいよ、クルル。これならカボチャ嫌いの僕でも食べられるよ」

「本当?無理してない?」

「無理なんてしてないよ。毎日食べたいくらいにおいしいよ^^」

「よかったぁ〜!!頑張って作ってよかったわ!!」

”カボチャのステーキを毎日”・・・は大変だけど、チェロにカボチャ料理を食べてもらえて
本当によかった♪

「じゃあ、あたし毎日いろんなカボチャのお料理を作るわ!」

「い、いや、クルル。他のカボチャ料理はまだちょっと・・・/汗」

意気込むあたしの姿を見て、チェロは焦りだした。

チェロがどんなカボチャのお料理でも食べられるようになる日まで
これからも頑張って”カボチャ嫌いを克服させられる料理”を勉強しよう♪
女は行動力でね♪♪

fin.

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