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ジェリービーンズ 小説


†゜。 笑顔のまほう〜受け継がれる想い ゜。†

マール王国・王妃コルネットは、
今夜のメニューを考えようと図書室へ向かおうしていた。
その途中・・・

1人のメイドがかなり慌てた様子でコルネットの元へ走ってきた。

「大変です!コルネットさま!姫さまがっ・・・」

「えっ?クルルが?!」

メイドが王女の自室を掃除しようと部屋を訪れたのだが、
中には王女の姿がなかった。

おてんばな王女は普段から皆の目を盗んでは
城を抜け出し、ローゼンクィーン家の令嬢で王女の友人
のクレアトゥール嬢とよく街へ遊びに行く。

「ま〜たクレアちゃんと遊んでいるんじゃないかしら?」

「私も最初はそう思ったので、エトワールさまに姫さまが
そちらにお見えになっていらっしゃるかお聞きしたのです。
でも・・・」

「でも?」

コルネットがメイドの言葉の続きを促す。

「姫さまはいらっしゃっていないようです。
今日はクレアさまも射撃の訓練があって
外出なさっていない様ですし・・・。」

「それじゃ、クルルは――・・・。
わたしがクルルを捜すからあなたは
ジオやソニアたちにクルルのことを
聞かれたら、このことがわからない様に
なんとか誤魔化してくれるかしら?」

「でも、コルネットさまお1人では――・・・

「大丈夫よ、心当たりがあるから、ね」

*

「クルルはきっとあそこに・・・」

クルル姫にはお気に入りの場所が城内にいくつかある。
よく中庭でラッパの演奏を練習したりしているので、
コルネットはまず最初にそこを捜すことにした。

廊下を渡り、中庭へと続く通路を歩いていく。

今日は一般開放の日ではないため、誰もいない。
一般開放の日は家族連れやカップルなどで賑わう場所である。

「・・・・っ」

どこからかすかに声が聞こえる。

「おかしいわね、今日は一般開放していないのに・・・」

不思議に思いながら声のする方へ向かう。

中庭に続く通路の途中に分かれ道のような通路がもうひとつある。
声はその先から聞こえるようだ。

(モンスターだったらわたしの自慢の腕で退治してあげるわ!!)

そんなことを考えながら先へ向かうと・・・

マザーツリーと呼ばれる大きな樹の根元に
金の髪の少女がこちらに背を向け、泣いていた。

その姿は娘のクルルに間違いない。

「クルル?どうしたの・・・?」

その声に驚いたのか、肩がびくっと震えた。

優しい母の声を聞いたクルルは
瞳からこぼれ落ちる涙を小さな両手で一生懸命に拭っている。

「おかあさま・・・ひっく・・・」

しゃくりあげながら泣いている愛娘の元へ
静かに歩み寄り、娘の目線にしゃがむと
やわらかな髪をやさしくやさしく撫でる。

「部屋にいないし、クレアちゃんのところにもいないって
いうから心配したのよ。どうして泣いているの?」

「ひっく・・・あのね・・・、
きにのぼってまちをみていたらね、
とおってもキレイなおはながさいてたの・・・
おかあさまにあげようとおもって・・・
てをのばそうとしたら・・・」

そこまで言ったと思ったらまた涙があふれてきた。

(怪我はないみたいだから、樹から落ちたのではなさそうね。
よかった・・・)

ふと、自分にも同じようなことがあったことを思い出した。

自分もクルルと同じような頃、不思議の森に虹を見に行く途中で
きれいな石を見つけた。
大好きな母のシェリーにあげようと思って
シェリーの元へ戻ろうとしたら、つまづいて転んでしまった。

地面に座り込み、泣いている自分に
シェリーは優しくこう言ってくれたのを今でも覚えている。

『コルネット、ありがとう。
コルネットの気持ち、すごく嬉しいわ。
でもね、おかあさんはコルネットの笑顔がいちばん好きよ』

『笑顔はね、幸せをくれる魔法なの。
笑顔でいると女神さまが幸せをくれるのよ』

シェリーの言葉が嬉しくて、それからは
いつも笑顔でいようとそう思ったのだ。

目の前で泣いている娘に、幼い頃の自分を重ねて見た
コルネットはクルルを優しく抱きしめた。

「ありがとう、クルル。
怪我がなくてよかったわ・・・。
ねぇ、クルル。
そんなに泣かないで?
おかあさんはね、クルルの笑顔が大好きなんだから」

「おかあさまぁ・・・」

肩に置かれた小さな手にぎゅっ、と力がこもる。

「笑顔は幸せをくれる魔法なの。
笑顔を忘れないでいると
女神さまが幸せをくれるのよ」

「だからもう泣かないで?
おかあさんにクルルの可愛い笑顔をみせて?」

「・・・・うんっ!あたし、えがおをわすれないようにするっ!」

まだ涙が浮かんだ瞳のまま、クルルが笑顔でこう言った。

「さあ、みんなが心配しているわ。
戻りましょ」

「はぁーい♪」

仲良く手を繋いで歩き出すその姿は
幼いコルネットと母シェリーによく似ていた―――。

*fin*

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