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ジェリービーンズ 小説


愛しいあなたへ

人を愛しいと想う気持ち
受け継がれていく優しい想い
出会いと別れを繰り返しながら
愛の輪は巡る---------

1

『今日はコルネットのお誕生日だから、好きなものなんでも作ってあげるわね♪』

『ほんと?やったぁ♪』

『うふふ、コルネットは何が好き?』

『う〜んとねぇ・・・』

『おかあさん♪』

「・・・リー・・・シェリー?」

誰かがあたしを呼んでる・・・

「あ・・・マリウス・・・」

目を覚ますとマリウスがあたしの顔を覗きこんでいた。

「涙・・・?どうしたんだ?」

ふと目元にふれると、頬には暖かい涙がこぼれていた。

「・・・夢をみていたの。コルネットが小さい頃の・・・」

「そっか。ここ(天国)からは下界はよ〜く見えるけど、オレはコルネットに直接会ったことってないんだよなぁ」
苦笑いでそう言ったマリウスはちょっと寂しそう。

「そうだったわね」

「・・・・・」

「なぁ、シェリー。コルネットのこと・・・まだ気になるか?」
少し考え込んでいたマリウスがふいに訊ねる。

「そりゃぁ、もちろんよ。だってあたしたちの大切な娘でしょ?」

マリウスが苦笑しながら

「そうだよな」

なんだか照れてる?

・・・・でもさっきのマリウスの言葉を聞いて
あたしはあのときのことを思い出していた。

あの子の・・・コルネットの結婚式のことを。

コルネットのウェディングドレス姿はほんとうにきれいだったわ。

とても幸せそうで笑顔が輝いてたの。

小さい頃は泣き虫で甘えん坊のコルネットが立派に成長して、
自分の夢を叶えた姿は「母親」としてすごく嬉しかったわ。

そして誇りに思った。

だけど・・・正直な気持ち、少し寂しかった・・・

『わたしおかあさんと一緒にいることが幸せなのよ!』

コルネットのこの言葉を聞いたとき、あたしは涙が溢れそうになった。

どんなにコルネットのそばにいてあげたいと思ってもいてあげられない・・・

あたしが人形クルルの姿を借りて”生まれた”のは、コルネットが
幸せになるまでの約束だったから。

出会いもあれば別れもある。

その逆もまた同じ。

これを繰り返しながら想いは受け継がれていく

「ふう・・・」

かるくため息をつく

「シェリー?どうした?」

「あたしってダメねぇ。今でもこうしてコルネットのことを見守ってるなんて
まだ子離れしてないのかなぁ・・・って思って」

「子離れかぁ。オレの場合子離れ、親離れって関係ないよなぁ〜」
「ふふっ、マリウスったら。そんなことないじゃない」

「?」

「あなただってこうしてコルネットのこと見守ってるんだもの♪」

娘だけじゃなくて、孫のクルルのこと、チェロのことも・・・
それになんだかここから下界を見てるのって楽しいし、飽きないのよね♪
これからもあたしたちは愛しいあなたたちを見守っているわ。

だから忘れないで
人を愛しいと想う気持ちを
その大切さを。
いつまでも。

02.5.3

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