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ジェリービーンズ 小説


逢いたい気持ち〜夢のなかで〜

マール王国は、今日も快晴。

ぽかぽかと暖かな光が差し込む部屋でクルルは挿絵つきの物語の本を読んでいた。

父親のフェルディナンド王によく似た色の髪、母親のコルネット王妃に似た色の淡いグリーンの瞳。
愛らしい表情に薔薇色のような頬。
両親に国王と王妃を持つクルルの本名は、クルセイル・シェリー・マール・Q。
王位継承権を持つマール王国の王女である。

まだ幼いけれど、クルルは物語を読むことが出来る。
教育係のソニアに英才教育(?)の賜物。

白い窓枠の大きな窓が開いていて、レースのカーテンがそよ風にふわふわと揺れている。

本の内容は、遠い国の王子さまとお姫さまが偶然出会い恋におちるという恋物語。

幼いクルルは物語に夢中になっている。

「このあと、おうじさまとおひめさまはどうなるんだろ〜」



物語を読み進めていくうちに、眠くなっていたらしく
うとうとと眠り込んでしまった。

ふと、辺りを見回す。

小さな家があちこちに建ち、オレンジの木が沢山ある小さな村。

前にも来たことのある様な風景の中、幼いクルルは何かに導かれるように
とある場所へと歩き出した。

村の奥に立つ、一軒の家の前まで来るとクルルは立ち止まった。
2階建てのオレンジ色の屋根の家。

「ここ・・・まえにもいちど、きたことがある・・・」

しばらく考え込んでいたクルルはトントン、と扉をノックしてみる。
だが、何の反応も返ってこない。

「・・・だれもいないの?」

小さな手で扉を押すと、静かに開いた。

懐かしいような香りのする家の中へ入っていくと、クルルの足は自然と2階へと向かった。

階段を上ると、目の前に扉がある。

キィ・・・。

少しだけ開いていた扉を開けると、部屋の中にひとりの人がいた。

クルルの気配に気がついたその人はこちらを振り返る。

その人は母親のコルネットによく似ていた。
長い金の髪がとってもきれいな女の人。

「おかあさま・・・?」

「いらっしゃい、クルル」

その人は微笑みながらこちらに歩み寄ってきた。

(おかあさまじゃない・・・?)

「あなたはだぁれ?どうしてあたしのなまえ、しってるの?」

「あたしはシェリー。あなたはあたしの孫だから知ってるのよ。」

「ということは・・・あたしのおばあさま・・・?」

「そう。こっちへいらっしゃい、クルル」

シェリーはクルルに手を差し伸べる。

クルルは小さな手をシェリーの差し出す手へ伸ばす。

(おかあさまとおなじかんじがする・・・。あったかい・・・)

シェリーはクルルをベッドの上に座らせると、自分もクルルの隣に腰掛ける。

「こうしていると、昔に戻ったような気がするわ。
まだあたしがここでコルネットと暮らしていた頃に・・・。」

「ここは、おかあさまのおへやなの?」

「そうよ。ここであなたのお母さんは大きくなったの」

「そっか。だからおかあさまとおなじにおいがするんだ」
クルルは部屋を見回しながら呟く。

「クルルは本当にコルネットにそっくりね。親子だから似てておかしくはないけど・・・」

「ねぇ、おばあさま」

「なぁに?」

「おかあさまは、おばあさまはあたしがうまれるずっとまえにてんごくにいったって
いってたけど、それはほんと?だっていま、あたしのそばにおばあさまがいるでしょ?」

「コルネットが・・・、あなたのお母さんが言ったことは本当よ・・・。
でも、どうしてもあなたに会いたくて会いに来ちゃったの」

「こんなことしちゃって、コルネットは怒るかしら・・・」

「・・・」
クルルは黙ったまま、シェリーの左手に小さな手を重ねた。
窓から差し込む光がシェリーの左手の薬指にはめられた銀の指輪にきらきらと反射し輝いた。
(おかあさまとおんなじゆびわだ・・・。きれい・・・)

「・・・クルル?」

「だいじょうぶ。おかあさまはおばあさまのこと、しかったりしないよ。
でももし、おかあさまがしかったらあたしがおばあさまをまもってあげる!」

「ありがとう、クルルは優しい子ね」

シェリーはクルルの小さな体を優しく抱きしめる。

このぬくもりを忘れないように・・・。

「クルル。これから色々なことが起こって、色々な人と出会って、色々なことを経験するわ。
辛い事があってもこれだけは忘れないで。
あなたを心から愛している人がいることを。そして人を愛する気持ちを。
このことを忘れないで、一生のお願いよ」

「おばあさま・・・」

祖母のぬくもりを感じながらクルルは答える。

「うん。あたし、おばあさまにいわれたこと、ぜったいにわすれない。
ずっとずっとわすれないからね」

「ありがとう・・・」

*****

ふと目が覚めると、そこはいつもと同じクルルの部屋。

「あれ・・・?」

きょろきょろと辺りを見回すが、シェリーの姿はない。

「ゆめ・・・だったのかな・・・」

(でも、なんだか体があったかい。ついさっきまでおばあさまに抱かれていたような感じがする・・・)

トントンと扉を叩く音がすると、扉の向こうでソニアが呼んでいる。

「姫さま、コルネットさまがお呼びです」

一瞬、またソニアに叱られるのかとびくっと体が震えたクルルだが、
コルネットが呼んでいると聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。

「は〜い、いまいくからまってて〜」

早くしないとソニアやコルネットに叱られると、クルルは慌てて部屋を出て行った。

そんなクルルの様子を、テラスに腰掛けて4枚の翼を背に広げたシェリーは優しく微笑みながら見つめていた。

fin.

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