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ジェリービーンズ 小説


優しい想い、小さな願い

今日はとても天気がいいので、あたしはコルネットを連れて料理用に使う赤いイノチウムを採りに不思議の森に来ている。

二人で手を繋いでゆっくりと森の道を歩いていく。

「ねぇ、おかあさん。いつもの曲きかせて!」

コルネットがあたしの袖をぐいぐいとひっぱりながらおねだりをしてくる。

「ふふっ、コルネットは本当にあの曲が好きなのねぇ」
「うん♪うたもだ〜いすきっ」

歩みを止めて近くの芝生に腰を下ろし、あたしはバスケットの中から小さなラッパを取り出した。

日の光を反射してきらきらと輝くこのラッパは、小さな頃大好きなキール兄さまからもらった大切なラッパ・・・。

大きく息を吸い、ラッパに口を当て曲を奏でると、コルネットはその柔らかな音色に耳を澄まし、じっと聞いている。
コルネットが大好きと言ってくれる曲。

この曲は、遠い昔----あたしが古代文明の王女だった頃、お母さまが教えてくれた子守歌・・・。
曲が終わると、コルネットが瞳を輝かせながらまたおねだりをしてくる。

「こんど、こるねっとにおしえて!おかあさんみたいにじょうずにふけるようになりたいからっ」

「それじゃあ少しずつ教えてあげるわね。大丈夫!コルネットならすぐに上手に吹けるようになれるわ」

「ほんと?!」
コルネットが真剣な顔で聞き返してくる。

「もちろん♪」

あたしが答えると安心したように笑顔になった。

「さぁ、もう少し歩きましょう、コルネット」

日が暮れる前に赤いイノチウムを見つけなくちゃ。

 2

必要な分だけ赤いイノチウムを採り、家に帰る。

それからあたしが夕ご飯の支度をしようと台所へ行くと、コルネットがお手伝いをしてくれた。
お皿を並べたり、料理を運んだり・・・。
小さな体で一生懸命頑張ってくれた。
コルネットはいつもこうしてお手伝いをしてくれる。

そうだわ!今度、あたしの自慢のレシピを教えてみようかしら♪

お義父さんとコルネットとあたしの3人で夕食を食べた後、あとかたづけをしようと席を立つと、
コルネットも席を立った。

「あとかたづけもおてつだいするぅ〜」

「ありがとう!でも、今日はいっぱいお手伝いしてくれたから疲れたでしょう?
かたづけはいいから、コルネットはもう休んでいいわよ」

「でもぉ〜」

「はいはい♪」

つまらなさそうなコルネットをバスルームでシャワーを浴びさせて、手早く着替えさせる。

そして、2階の部屋にあるベッドに寝かせる。

「う〜、こるねっと、まだねむくないよぉ」

「いいから、良い子は寝ましょうね〜★」

そう言って、あたしはあの子守歌を歌う。
ふふっ、コルネットが眠くないって言っても、あたしがこの子守歌を歌ってあげると不思議と
眠ってしまうのよ♪

優しくコルネットの髪を撫でながら歌う。

♪ なによりも大切な愛しいひとよ

無邪気で汚れのないその笑顔

泣き虫で甘えんぼ わたしの天使

早く大きくなって元気に育て

悲しいときもくじけそうなときも

この歌を歌って明るく生きてほしい

希望と一緒に歩いてほしい

夢を忘れずに歩いて欲しい ♪

この子守歌には、優しい、暖かい想いが込められているの。
だからあたしは、この子守歌をいつもコルネットに歌って聞かせている。
あたしが子供の頃、お母さまが歌ってくれた様に・・・

お母さまがあたしの幸せを願ってくれた様に。
あたしもコルネットの幸せを願いながら・・・

いつか・・・いつか世界中にこの優しい、暖かな想いが広がり、
そしてみんなが幸せになれますように----

01.12.23

※一部修正した箇所があります。

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