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ジェリービーンズ 小説


飛べない天使

*ちいさな白い小鳥は狭い鳥篭の中で、大空に憧れていました。
でも、この小鳥には自由がありません。
翼があっても飛べない小鳥。
羽ばたけるのはこの鳥篭の中だけ・・・。
おもいきり、羽ばたけるあの空へ飛び立ちたい・・・*

*

「翼があっても飛べない小鳥か・・・」
シェリーは小さなため息をひとつついて、本の表紙を閉じる。

「この本の小鳥さんは、今のあたしと同じね。
翼があっても、あたしには自由がない。
カゴの中の小鳥と同じ・・・」

シェリーの背には白い小さな翼がある。
この翼をおおきく広げれば空を飛ぶことが出来る。
・・・王女である自分には飛ぶことなどないだろうけれど・・・。

自室の豪華な椅子に座ったまま、憂鬱そうな瞳で窓から見える青く透き通った空を見上げる。

王家に生まれたシェリーは、本当の自由を知らない。
王女であるシェリーは自由に生活することが許されなかった。
全てが決められた生活。
唯一、自由と呼べるのは
執務を終えた後のほんのわずかな時間。

以前、侍女のひとりに心の内を話したことがある。
”自由になりたい”と。

”姫さまは、お1人になれる時間があるでしょう?
お1人になれる時間・・・、それが自由になれるときではないでしょうか?”

そのときの事を思い出し、不服そうに呟く。

「そんなの、本当の自由なんかじゃないわ。
あたしが求めている自由はそういうんじゃないもん。
お城の中で毎日毎日”良いお姫さま”を演じるのも疲れてきたわ。
外の世界に行きたい・・・」

気分転換をしようと、自室を出て城内を歩き出した。
ふと気がつくと、シェリーは兄の部屋の前に来ていた。
無意識にここへ来てしまったらしい。

「兄さまのお部屋・・・」

中へ入ろうか迷ったが、思い切って扉を開けた。

「キール兄さま」

中へ入ると兄であり、この国の王子であるキールディアが窓際に立ち、
外を眺めていた。

「シェリー?どうしたんだい?元気がないみたいだけど・・・」
優しく兄に聞かれ、シェリーは決心をした。
今まで、兄にだけは話せなかった心の内を語ろうと。

「・・・兄さまは自由って知ってる?
ひとりになれる時間のことを・・・自由って言えると思う?」

いつもなら笑顔を絶やさない、可愛い妹の悲しげな表情に
キールディアは不思議に思いながらも、優しく語りかける。

「自由か・・・。
その質問はちょっと難しいかな?
人によって自由っていうのはそれぞれだからね。
うーん・・・
自由っていうのは・・・、誰にもしばられない本当の自分でいられるとき・・・かな?」

「キール兄さまもそう思う?
・・・あたしもね、自由っていうのは
何にも縛られない、自分が自分でいられるときだと思うの。
だから・・・、」

「シェリーは”自由”になりたいんだね」

どきっ。
自分の想いをストレートに見透かされ、胸がドキドキと鼓動を打った。

「あ・・・あのね、キール兄さま・・・」

誤魔化そうと必死に言葉を探そうとしたが、上手く言葉が出ない。
両手を胸の前で祈りのかたちに合わせた状態で下をうつむくシェリーに
そっと近づくと、大きな手で妹の髪を優しく撫でながら穏やかな声で話す。

「いいんだよ、自由を求めることは悪いことじゃない。
誰にだって自由を求めたり、自由になる権利があるんだよ。
ただ・・・王子とか王女の立場の者にとっては
難しいけどね・・・」

そこまで話すと、今度はシェリーの目線の高さまでかがみ、ひとつの質問をしてきた。

「シェリーは自由になってなにをしたい?」

「あたしは・・・普通の女の子みたいに
素敵な恋をしたり・・・お友達と街へお買い物に行ったり・・・
そういうことをしたいの」

妹の素直な答えに兄は優しく微笑む。

「いつか、叶うときが来るよ。
シェリーの求めている自由が・・・」

「・・・ほんと??」

聞いてみても兄はただ微笑むだけ。

兄の言葉の意味はわからないけれど、シェリーは素直に受け止めた。

「そっか。兄さまがそう言うのなら、きっと叶うよね。
あたし、兄さまの言葉を信じて待ってる。
話を聞いてくれてありがとう。
キール兄さま、大好きvv」

そう言って兄に抱きつくシェリー。
優しい兄がいる、ただそれだけでもシェリーは幸せだ。

いつか、キール兄さまが言う”自由”が訪れますように・・・。

そう、心の中でそっと祈った。

04/6/24 

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