幻想世界Vol.9 ドラゴンとは何か?−4


1900年代

ファンタジーブームが起こり、テーブルトークRPGの発売をきっかけに様々なドラゴンが登場する。西洋ドラゴンの姿をしたドラゴンが、さらに細分化されて特徴付けられているのも面白い。日本ではそれらに中国やインド、ヨーロッパ各地など世界中のドラゴンと日本の竜神などが入り混じり、独自のドラゴン形態が誕生した。

しかしながらどのドラゴンをどこの分類に含めるかは明確ではなく、作品によってマチマチであるため、余計にドラゴン像が把握しづらくなるという事態も発生した。これらはキリスト教の考えがベースになっているが、日本にキリスト教が浸透したという事ではなく、単純にキリスト教圏からドラゴンの物語が伝わった事に起因する。

後年登場するコンピュータゲームの世界では更に枚挙に暇が無く、名前だけが先行したり他のゲームの設定を流用したり、それを更に変形させたりで、すでに原形をとどめていないものがほとんどであるため、ドラゴンの分類としては含められない場合も多い。それに伴ってドラゴンに対する考え方も様々に変化した。ドラゴンの姿は毎日変化しているといっても過言では無いだろう。これらのドラゴンを個別に取り上げる事は実質的にほぼ不可能である。

その中からあえて例を挙げるなら竜人の存在がある。狼男(ワーウルフ)やトカゲ男(リザードマン)の存在が一般的に知られるようになれば、ドラゴンを起源とした亜人種が登場するのも自然の成り行きと言える。竜人はドラゴンのブレス能力と硬い鱗を持ち、リザードマンを超える力と高い魔力、場合によっては飛行能力まで併せ持つ最強の亜人種である。寿命も非常に長いが欠点は繁殖能力が低いという事と、個体数が絶対的に少ないという事だ。だが竜人が登場するゲームの多くが人間視点で描かれ、非常に短い範囲の歴史しか語られないため、竜人の欠点は皆無といえる。

もう一つ、合成竜についても触れておこう。元来神話の中で生み出されたキマイラなどの複数の動物を合わせたような生き物を合成獣(キメラ)として分類するゲームが登場すると、ドラゴンもまたキメラであるとされた。そしてドラゴンは最強の合成獣として位置づけられるようになる。ただし合成竜が登場するゲームは極端に少なく、ドラゴンは独自の種族として数えられる場合が多い。しかし、ドラゴンも出生をたどれば複数の生き物の特徴を合わせて生み出されており、そういった意味でキメラである事は間違いでは無いだろう。

現代日本におけるドラゴンとは力、強さ、生命力、雄雄しさの象徴である。それは時に善となり、悪となり、我々の前に姿を現す。またかっこよさ、美しさなどの象徴でもあり、非常に人気が高い。ドラゴンは一種のブランドと化したと言っても過言ではないはずだ。


まとめ

コンピュータゲームの普及でドラゴンは非常に身近な存在となったが、一般的に知られているのはその姿のほんの一部である。中には「ドラゴン?」と首をかしげるような物も多い。

結局のところ、ドラゴンは「人が敵わぬもの」の象徴だったと言える。それは神と同等の力を持っており、それを倒すのも神だけだった。しかしキリスト教の普及に伴い、ドラゴンは「英雄(人)に退治されるもの」に変わっていった。

そして現在、ゲームの世界ではドラゴンは最もポピュラーな中ボスと化し、そしてほぼ全てのドラゴンが「プレイヤーに倒される」運命を背負わされ、フィギュアやぬいぐるみになるなど愛玩用の生物となってしまった。

しかしドラゴンは強いのである。愛玩生物となった今でも、ほとんどの作品がドラゴンの強さを強調している。だがそれ以上に主人公が強くなりすぎるのだ。レベルさえ上げれば10歳の女の子でも勝てるようなドラゴンなど、ドラゴンと呼ぶに相応しくない。

そういう意味で現代のドラゴンを取り上げるなら、やはりウィザードリィ〜リルガミンの宝珠〜に出てくるル・ケブレスは外せないだろう。ファンタジー好き、ドラゴン好きなら一度はその強さを味わってもらいたい。

もっとも・・・それ以前の問題で、仲間が経験値の高い敵を倒すのを見ているだけでドラゴンすら倒せる強さを手に入れる世界をファンタジーと呼んでよいのかどうかが疑問なのだが・・・Fantasy(幻想)というよりDelusion(妄想)の方が相応しいと思うのは、はたして私だけだろうか?


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