幻想世界Vol.3 魔法について 全文

魔法とは何か

魔法というのは非常に曖昧な力です。これほど(ゲーム界)一般に浸透しているにも関わらず、実はキチンと体系立てて説明しているゲームはほとんどありません。

魔法は、歴史、体系、エネルギー源など様々な問題がありますが、これらのどこを重視するかで、その姿が全く変わってしまいます。そのあたりの説明は今回は割愛しますが、まずは魔法の定義をしておかないと話ができないので、とりあえず一般的な設定として、以下のように定義します。


魔法使いの役割

多くのゲームの場合、魔法使いとは攻撃魔法のエキスパートであり、その強大な魔力でパーティーの戦力を大きく底上げする存在です。しかし、コンピュータRPG(以下CRPG)の世界に慣れてから、テーブルトークRPG(以下TRPG)に初めて触れた人は、あまりの攻撃魔法の少なさに驚く事でしょう。

攻撃魔法とは「破壊の力」です。そして破壊の力を主に行使するのは邪神に仕える神官であり、邪教徒です。つまり攻撃魔法は本来、邪悪な力なのです。だからTRPGでは攻撃魔法は極めて少なく、また威力もさほど大きくはありません。

さて、そうなると魔法使いの役割がガラリと変わってきます。

魔法使いの本来の役割は「知識」です。魔法の研究に明け暮れる彼らは、一般市民に比べ、魔法、魔物、魔術品、歴史、地理などに対し、非常に豊富な知識を持っています。その知識と知恵こそが、魔法使いの最大の武器であり、そして冒険に欠かす事のできないものなのです。


魔物の知名度

よく勘違いしている人が多いのですが、例えばゴブリンやスケルトンといったゲームでは一般的な魔物でさえ、ファンタジー世界の一般的な住人は、その名前と姿ぐらいしか知らないのです。場合によっては名前も知らないという事もありえます。

あらゆる場所に魔物が生息している世界では、近隣の町への旅ですら危険な冒険であり、用心棒を雇ってなお命がけの行為です。商人や騎士たちを除き、基本的には町や村から離れる事はありません。

つまり、多くの魔物はその人にとって初めて出会う敵であり、そして未知の生物なのです。


知識があるという事

例えばCRPGでは敵は全て倒し、経験値とお金を稼ぐために利用します。しかしTRPGでは敵を倒しても経験値はほとんどもらえず、またお金なんて持ってるはずがありません。そのため、無駄な戦闘は避け、極力戦力を温存する事が重要になります。

その時、魔物の特徴や生態、生息地域や周辺地理の知識があれば、無益な戦いを避けることができます。逆に何も知らなければ強敵の住む土地に安易に足を踏み入れて、あっさりとその人生に幕を下ろすことになります。

冒険者の第一目的は「生き延びる事」、第二が「依頼の達成」「遺跡に眠る宝」です。敵を倒す事は、目的ではないのです。

ただし、CRPGの多くでは、魔物を倒す事自体が冒険の大きな目標である場合があります。この場合は実践で自分を鍛え、敵の居城や弱点を探し、そして最終的にそれを打ち破る事が第一目標でしょう。しかしその場合でも、知識豊富な人間の協力が無ければ、決して目標は達成できない事は、過去の作品が証明しています。


魔法の種類

CRPGでは表現の難しさからか、多くの魔法が登場しません。例えば情報を得るために、カエルやカラスに化けて敵の屋敷に忍び込んだり、音を飛ばす魔法で反対側の茂みに音を発生させ衛兵の注意をそらしたり、太古の魔術書や異国の文字を解読したり。

魔法使いの魔法は、主にこういったサポート系のものが多いのです。しかし決して攻撃魔法が使えないわけではありません。しかし、魔法使いは一般的に受け入れられている存在ではなく、畏怖と畏敬の対象です。そのため魔法使いの多くは目立つ事を嫌います。また、より小さい魔力で大きな成果を挙げることを誇りとしており、効果に対して魔力消費が大きく、無骨な破壊魔法を好んで使うものはあまりいないのです。


魔法の使用例

ある魔法使いが領主の差し向けた刺客に襲われ、屋敷の中を逃げ回っています。相手は歴戦の戦士が3人、コチラは老齢の魔法使いが1人。しかも狭い屋敷の中には貴重な資料が山と詰まれており、まさか攻撃魔法をぶっ放すわけにもいきません。

まず魔法使いは、一つの狭い部屋に逃げ込みます。部屋の入り口は通路が狭く一人ずつしか通れないようになっています。ここで最初の一人が扉をくぐった瞬間、ドアを遠隔操作で閉め、魔法の鍵をかけてしまいます。

突然後ろの扉が閉まったことに驚いた戦士は必死でドアを開け、仲間を招きいれようとしますが、魔法によって錠をかけられた扉は、より強力な開錠の魔法でしか開く事はありません。結果として残りの二人は別の道を探す羽目になり、残された戦士は一人で魔法使いを追うことになってしまいました。

さて、戦士が扉と格闘しているスキに、魔法使いは次の部屋で準備を整えていました。床に描かれた魔法陣の中心に不適にたたずむ魔法使い。それを見た戦士は魔法陣を何らかのトラップだと考え、警戒心を強めて魔法陣の外側から攻撃の機会をうかがいます。

しかし魔法陣にたたずむ魔法使いは幻影であり、本物の魔法使いはすでに屋敷の外へ出ていました。

「はてさて、あやつがわしの幻影と遊んでいる間に、残りの二人をからかってこようかのう」

魔法使いはのんびりと腰を下ろすと、懐から取り出した水晶に残った二人の姿を映しながら、どうやって彼らを歓迎してやろうかと思いをはせるのでした。


魔法使いの戦い

前述のように、魔法使いの戦いの基本は「心理戦」です。相手の心のスキをついて、煙に巻くような戦い方が良いのです。

前の例では、遊ぶつもりが無ければ魔法陣の部屋に戦士をおびき寄せた時点で、石化の魔法で石に変えたり、変身の魔法でカエルにしたりすれば終わりです。また残った二人も幻の魔法でお互いを自分の姿に見せてしまえば、勝手に同士討ちしてくれる事でしょう。

このように魔法の効果を熟知し有効に使うことで、力による脅威を簡単に回避してしまうのが、魔法使いなのです。力に対し、正面から力(攻撃魔法)で立ち向かうのは、体術で劣る魔法使いには本来向かない戦い方です。


CRPGの魔法

CRPGでは、多くの場合攻撃魔法以外役に立ちません。魔法使いを単なる破壊者としてしか見ていない証拠です。また魔法の力を過小評価すると共に、破壊専用だと誤解している例でもあります。

例えば、魔法のランクが上がってくると、明らかに世界を滅ぼす魔法を使えるようになります。隕石を降らせる魔法や核爆発を起こす魔法などは論外でしょう。それ以外にも、巨大な火球を降らせる魔法を森の中で連発したり、海での戦いで嵐を呼び起こしたり、洞窟の中で地震を起こしたりします。明らかに「自分が死にます」。

CRPGでは魔法は「派手さ」だけが優先され、そのデメリットなどは全く考えられていません。仮に魔王を倒して世界を救っても、自ら世界を崩壊させ、自然を焼き尽くし、町を破壊していれば、勇者として迎えられるどころか、魔王として退治されるのがオチだと思います。

せめてTPOを考えて、場所によって使用魔法に制限をかけないと、魔法使いと破壊神は同じ意味になってしまうと思います。


魔法の限界

魔法は万能の力ではありません。あくまでも「技術」であり、法則無視はできません。魔法世界には魔法世界の法則があるはずです。

例えば宇宙空間から星のかけらを落とす魔法(隕石の魔法)は、その魔力を宇宙空間まで届かせる必要があります。それができるなら、世界中のどこにでも魔力を届かせる事ができるでしょう。また星を動かすほどの強大な力があるなら、山を動かす事など造作も無いはずです。どう考えても人間の力を超えています。

しかし、このような魔法が存在する一方で、魔力以外で開錠できない宝箱というのが存在しません。魔力による開錠でしか開かない扉もです。どちらもTRPGでは一般的であり、込める魔力が少なければ初歩的な魔法です。

簡単な魔法が存在せず、非現実的な破壊魔法が氾濫するCRPGの魔法は、科学を破壊兵器にしか転用できない世界と同じであり、その結末は文明の滅亡以外にありえないのではないかと思います。仮に魔王の脅威を排除したとしても、何の意味も持たないでしょう。


魔法使いに求められる能力

魔法使いに最も重要な能力は、飽くなき探究心と冷静さです。前述のように、魔法使いの役割はその豊富な知識によるパーティーの道標です。もちろん豊富な魔力、というのも必要なのかもしれません。しかしそれは攻撃魔法の威力などでは決してなく、むしろどんな困難な状況でも、冷静かつ的確な判断力でパーティを危機から救うための、手札の一つにすぎないのです。

魔法使いとは、賢者(賢き者)です。多くのゲームでは、賢者は攻撃魔法と回復魔法の両方が使える万能魔法職になっていますが、これはウィザードリィの影響でしょう。本来賢者とは、知恵ある者を称える称号であり、職業名ではないのです。最も厳密に言えば魔法使いも職業名ではありません。魔法を使う者(研究する者)の総称です。

つまり魔法使いに求められる能力とは、導き手としての知恵であり、知識なのです。さて、そこで問題になるのが若い魔法使いの存在です。本来魔法は未知の能力であり、多くの場合、限られた人間にしか使うことができません。その能力の発動には多くの修練と研究が不可欠で、ゲームに出てくるような若年魔法使いというのはほとんどありえません。古い魔法使いが老人限定なのはこのためです。


魔法の属性と精霊の関係

魔法は多くの場合4大精霊、すなわち火、水、土、風の精霊の力を根源とします。これに当てはまらないのが神聖魔法、いわゆる僧侶の使う「神の力」です。この4大精霊は世界を構築する基礎となっていることが多いようです。

しかし実はこれは定説をそのまま流用してあるだけに過ぎず、実はあんまり説得力が無かったりします。仮に世界を構成している要素があり、その各々に精霊が存在するとしたならば、そこに少なくとも火と風は含まれないし、他の属性も決してゲームのような分類にはならないでしょう。そもそも世界の構築にはそれぞれの構成要素が複雑に絡み合ってできているのだから、4つに分類するというのも乱暴なわけです。

例えば水は多くの場合冷気を内包します。しかし、水自体は固体、液体、気体の3つの形態を持ちその形態は圧力と温度によって変化します。つまり水の状態は温度と圧力という2つの外的要因によって変化するものであり、水自体が低温の要素を持つわけではありません。

土は大地の力とされ、特に植物や自然との関係が強調され、主に守護の力があるとされていますが、この大地を陸地、または岩石、鉱石を含む地殻全体と捉えるのか、それとも星そのものと捉えるのかによって内包するエネルギーが大きく変わってきます。しかしどちらにせよ植物は水と太陽の力無しには生存できないものであり、大地の力ではありません。更に星として捉えた場合には、どちらかといえば熱と磁力と引力と回転エネルギーの巨大な塊であり、守護というよりは最も破壊に近い力です。

風は非常に曖昧ですが、真空や雷、飛行、速度などの力を持つ事が多いようです。主に大気を指し示すようなのですが、そもそも大気は動植物の活動に欠かせない様々な気体を内包しており、地形と熱の作用で風が生み出されているので、大気と風は大きく異なります。風は大気と熱と大地による派生物なわけです。また移動速度など運動性能を大きく変える能力がありますが、それが大気や風とは関係が無い事は明らかです。もし仮に大気中の成分を自在に操る力を指し示すのであれば、それはあらゆる生命の命を握る事に等しいので、死をもたらす能力となるでしょう。

火は最も基本的とされ、最も攻撃的な破壊の力とされていますが、そもそも火自体が派生物です。炎は発火により発生します。この発火には様々な要員がありますが、まず大気中に燃焼する気体が無ければ決して発火しません。無理やり発火させてもすぐに鎮火するでしょう。炎を生み出すには大気との連携は不可欠ですが他にも燃焼物自体も必ず必要になります。また高熱を司る場合もありますが、そもそも熱は運動エネルギーの排出物であり、運動エネルギーの活性化が高温を生むと同時に、運動エネルギーの沈静化によって低温も生み出す事ができます。そして運動エネルギーの停止は氷結であり死です。さらに時間の停止でもあります。熱を操る能力は高温〜低温までを広く操る能力であり、一方に特化するという事は考えにくいです。また運動エネルギーの活性化は自己再生能力の促進でもあり、また老化の促進でもあります。火という分類は最もありえない分類なのです。


真の分類とは?

これはあくまでも私の説ですので、厳密には「真の」分類ではありませんが、4大元素よりはまともだと思います。また各分類を属性ではなく、要素と呼びます。ちなみにここでの魔法は各要素を「操る」能力であり、生み出す能力ではない点に注意してください。

まずは光の要素。これは光量の強弱を司ります。また光に含まれる色のファクターを内包しますので、光の要素を操れれば相手の視覚を錯覚させ、自分の存在を見えないようにする事もできるでしょう。特に人間は視覚に頼っているため、その視覚を自在に錯覚させられる能力は非常に強力です。強力な光によって一時的、または永続的に視覚を奪う事も可能です。他に紫外線やX線など不可視光線も含まれるため、研究が進めば広い範囲での応用が可能となるでしょう。扱い方によってはレーザー的な使用も可能です。当然ですが光量の縮小により闇を操る事も可能です。

次に熱の要素。これはどちらかというと運動エネルギーを操るわけですが、運動エネルギーは熱要素を操るための手段として捉えます。熱は前述の通り、高温から低温までを司ります。熱を操る事で対象物を「直接」燃やす事ができます。またさらなる超高温によりあらゆる物質を溶解、気化、消滅させる事ができます。また低温により凍傷を与える事ができるほか、超低温によって凍結、脆化、組織破壊、そして死をもたらす事ができます。しかし、適度な温度調節は運動性能の活性化や生活環境の安定化をもたらします。

次に大気の要素。これは大気中に含まれる様々な物質、気体、粒子などを司ります。これらの一部を操る事で、特定の現象を引き起こしたり、また起こしやすくしたりします。また、部分的に排除する事により真空を作り出す事も可能です。更に大気中の成分密度の変化により圧力を変化させる事ができ、空気の振動によって音を操る事もできます。また振動伝達のロスを操作する事により、影響範囲を伸縮する事も可能です。真空、高圧力、超音波など、攻撃に転用した時の潜在能力は計り知れません。

そして電気の要素。これは大気の要素にも含まれるのですが、電気の特性が非常に利便性が高い事が発見されたため、別要素として細分化したものです。文字通り電気エネルギーを司ります。電気を操る事は機械文明の発展に大きく貢献しますが、まだ発見されて間もないため、一般的な利用法は電灯レベルにとどまっており、今後の研究が期待されます。ただし大気に働きかける事により雷を発生させられる事がわかっており、強力な魔物に対する有効な攻撃手段としても注目を集めています。

更に物質の要素があります。これは鉱物や堆積物など大地の構成物質を司ります。実はこの分野は自在に操る方法が確立しておらず、一部の研究者を除いては利用方法のみが研究されています。これらの物質の構成要素を自在に操る事ができれば、加工や採掘が簡単になるばかりではなく、任意の物質を自在に作り出す事ができるのですが、研究は全く進んでいない状態です。

また発見されていない要素として磁力があります。磁力を司っていますが、まだ存在すら認識されていないため詳細は不明です。

最後に生命の要素。生物の生体活動を司ります。この分野を操る魔法は古くから研究されてきましたが、生物の体は非常に複雑なため副作用が多く、また不適切な処置による犠牲者が後を絶たなかったため、長く神を冒涜する邪悪な技として禁じられてきました。近年、医療技術の発達と共に医療転用の目的で生命の要素の研究も再開され、魔法医学という新しい分野が生まれました。それにより多くの奇病難病が治療可能となりましたが、同時に様々な生体破壊法をも生み出したため、限られた人間にしか使うことができない魔法となっています。

以上7要素が世界の構成要素です。もし仮に精霊が世界を支えているのであれば、この7要素だと私は考えます。そしてこれらの要素を操るためのエネルギーこそ魔力であり、魔力によって生み出されるパワーが魔法エネルギーという事になります。


魔法まとめ

とりあえず魔法に関してはまだまだ言いたい事があるんですが、いつまでたっても終わらないのでこの辺でやめときます(笑)

武器に関してもそうですが、現在のゲームは本当に過去の作品の設定をそのまま疑いもせずに使ってるだけのものが多いので、そろそろテコ入れしてほしいです。そういうゲームが嫌いなわけではないんですけどね、たとえば普通に売ってる剣の最強がフラムベルジュだったりすると…かなりがっかりしますからね(→ねぇアトラスさん/笑)


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